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RRA
迅速農村調査法
(Rapid Rural Appraisal)
1970年代に入る頃から開発協力の現場で行われるようになったのは、開発の対象の詳しい調査や分析であった。それまでの社会進化論的なモデルを一方的に当てはめることから、それぞれの対象地域やコミュニティにおいてどのような問題やニーズが存在するのか、社会構造や環境はいかなるものであるかを入念に調査分析することが行われるようになった。当初は大規模な社会経済調査や、人類学者による参与観察調査などが行われていた。
しかしこれらの調査は長期間を要し、またかかる費用も相当な額に昇った(Chambers,
1991)。無論学術的な観点からこうした資料の有用性に異論はないが、限られた期間・人材・費用で実施しなければならないプロジェクトでは、あまり現実的とは言えない。またこうした緻密な調査の結果は膨大なデータとなるが、プロジェクトが必要としている資料は、多くの場合その一部だけである。
更に手軽で、安く、効果的な手法はないかと各分野で開発が行われてきた。例えば農業分野ではFSR (Farming Systems Research)が、アグロフォレストリーではDiagnosis & Design(Kerkhof, 1990)などの技法が編み出された。分野を超えた手法として一般的に迅速型調査法(Rapid
Appraisals)などと総称されるものが多く開発され、こうした中で社会開発プロジェクトや社会林業プロジェクトで一般化した技法が、RRA
(Rapid Rural Appraisal)である。
RRAでRRA/PLAと、ほぼ共通のツールを用いるが、異なっている点は、あくまで外部者が調査のために用いる点で、ツールを用いることを通しての住民のエンパワーメントは特に意図されていないことである。
調査手法としてのRRAにはいくつかの重要な原則が存在する。以下にそれを列記する。これにはRRA/PLAに引き継がれている原則も含まれている。
(1) バイアスの打消し(offsetting bias)
地理的要因、プロジェクトの固有要因、属人的要因(ジェンダーや社会の階層)、季節的要因、専門的な要因などを排除する。
(2) 迅速で漸進的な学習(rapid and successive learning)
柔軟性、幅の広さ、相互の交流、新しい発想など。
(3) 役割の転換(exchange of roles)
地域住民から、彼らの認識やカテゴリーに基づいて学び、地域住民の知識を見出し、理解する。
(4) 適度の無視と適切な不正確さ(optimal ignorance and adequate imprecision)
必要以上の精度は求めない。絶対的な数値を求めるのではなく、多くの場合重要なのは、傾向、重み付け、そしてランク付けなどである。
(5) 三角検証(triangulation)
複数の方法、情報源、専門分野、情報提供者、場所などを元に、情報のクロスチェックを行う。これによって次第に事実に近づいていく。
(6) 多様性や違いの容認(admitting diversity and differences)
平均値や最大値を求めるのではなく、多様性や違いをそのまま把握する。
(文責:野田@尾張一宮)
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